「
私のあしながおじさん」は1990年に放送されましたが
1975年から始まった
世界名作劇場「フランダースの犬」から
既に15年が過ぎていました。
世界名作劇場の視聴率は70年代がピークでその後80年代後半
には低迷してきいました。
そのテコ入れに制作されたのが「
私のあしながおじさん」といえます。
結果的に視聴率は16,2%なので成功といえますね。
これ以後の名劇でこの作品を超える視聴率を上げた作品はありません。
(名劇視聴率ランキングでは23位中9位に入っています)
この作品の特筆すべきは主人公ジュディの性格年齢設定でしょう。
ルーシー、カトリ、セーラ、ポリアンナのような優等生的
いい子ではなく、かといってアンネットほど男勝りではなく
ルーシーほど幼くなく、ジョオほど年齢が上でもない。
14歳の女の子だと引き立つ、お転婆という設定がよかった気がします。
お転婆キャラのジュディが巻き起こす騒動がコメディタッチで描かれ
楽しく観ることができました。
時代背景も1920年代と現代に近く、高校が舞台なので恋愛模様も描かれ、
現代の学園ラブコメの延長として感情移入しやすかったかもしれません。
同時進行で名劇的な、孤児としての劣等感克服も描かれました。
しかし後半になると恋愛色が強くなり最終的にはそれらを通り越して
ジュディが大恋愛の末、結婚してしまうというかつての名劇にはない
展開になります(名劇初のキスシーンもありますね)
それでも視聴率を取れたのは、視聴者の年齢の問題でしょう。
視聴者が名劇に接したのが80年代辺りだとするとその世代は90年には
中高生以上だったので年齢的にさして戸惑う事がない、むしろ感情移入
しやすかったかもしれません。
逆にいえば「あしなが」が視聴率を取れたのはこの辺りの
視聴者層をうまく取り込めたからでしょう。
ここまでみると子供単体の主役作品で視聴率が取れたのは
86年の「ポリアンナ」まででその後14%以上視聴率が取れたのは
○87年「愛の若草物語」14,9%
主人公ジョオが15歳。
○90年「私のあしながおじさん」16,2%
高校が舞台、ジュディは高校生。
○91年「トラップ一家物語」14,8%
18歳のマリアと子供達の並立。
○93年「ナンとジョー先生」15%
ナンとジョー先生という大人と子供の並立。 冷静に見ると視聴対象がやや上の作品のみなんですよね。
昔のように明確に子供が主役とはいえない作品です。
80年代後半からはもう、子供を主役にし子供の視聴者のみ
ターゲットにしていては視聴率が取れなくなっている時代でした。
その為主役の年齢を上げるか大人と子供を置き、両方の視聴者を
取り込むという形でないと苦しくなっているのが分かります。
その後それを打破しようと子供が主役の作品を作り続け
94年「ティコ」が始まりますが、視聴率は下がり続け97年「家なき子レミ」
で20世紀の
世界名作劇場は終了しました。
「あしなが」のように視聴年齢対象を上げた作品を作るわけにもいかず、
かといって子供向けの作品は視聴率が取れない、というジレンマ状態から
世界名作劇場は抜け出せなかったといえます。
そう考えると90年代の名劇を語る時「
私のあしながおじさん」は色々な
意味でターニングポイントイなった作品かもしれません。
